原子力関係の資格って何があるの?
原子力技術者のスキルアップとして,原子力関係の資格取得があげられます。
資格取得は,以下の理由でオススメです。
- 保有しているスキルを可視化できる。
- 技術者が保有すべき知識・技能が効率よく学べる。
- 会社によってはお祝い金,手当がもらえる。
原子力に関係の深い資格として以下の通りです。
① 放射線取扱主任者
② 原子炉主任技術者
③ 核燃料主任技術者
④ 技術士(原子力・放射線部門)
⑤ 作業環境測定士(放射性物質)
上記の資格を全て取得している(作業環境測定士は試験合格のみ)私が,
これらの資格取得を通して,どのようにスキルアップしていくのがオススメか解説したいと思います。
取得順序と難易度
取得順序(スケジュール)の案
取得順序のイメージとしては以下の通りです。
入社1〜2年目 :① 放射線取扱主任者
入社2〜3年目 :④ 技術士(原子力・放射線部門)1次試験
入社2〜7年目 :② 原子炉主任技術者 or ③ 核燃料主任技術者
入社7〜10年目:④ 技術士(原子力・放射線部門)2次試験
その理由は以下の通りです。
- ①放射線取扱主任者は,マークシートであり,比較的難易度は低い(合格率3割〜4割)。まず,原子力に携わるにあたり放射線の知識(人体への影響含む)を得ておくことは必須。
- 次に,④技術士の一次試験も,マークシートであり,比較的難易度は低い(合格率6割弱)。ただし,二次試験は,技術士補に登録して技術士の補助4年間行うか,関連する専門的応用能力を必要とする業務を7年間行う必要があり,ハードルが若干高い。
- ②原子炉主任技術者は,3日間にわたる筆記試験であり,難易度が高く(合格率3〜10%)一度で合格することは難しいため,上記の資格取得後,じっくりと時間をかけて勉強するのが望ましい。なお,二次試験(口答試験)には受験資格が必要(6ヶ月の実務経験)
- ④技術士の二次試験は,受験資格として,4年ないし7年の実務経験が必要であり,受験に必要な”実務経験照明書”について勤務先の所属長等の証明が必要となります。そのため,資格取得の順番として最後になるかと思います。
- ただし,合格率は2割〜3割であり,難易度は②原子炉主任技術者より低いです。
取得のメリット・デメリット
メリット
- 保有しているスキルが可視化できる。
- 技術者が保有すべき知識・技能が効率よく学べる。
- 会社によってはお祝い金,手当がもらえる
保有しているスキルを可視化できる
資格を取得することにより,当該スキルを保有していることについて,世間的に認められたということになります。自分に自信がつくと共に,他人から一目置かれることになります。
また,業務上必要とされる資格もあるため,その場合は会社から必要とされる人とされます。
その一例として,原子炉を保有している会社が,原子炉を運転する技術的能力があるかないかの尺度として,その会社に何名の技術者(①放射線取扱主任者,②原子炉主任技術者等の資格保有者)が所属しているかがあります。これは,原子炉を設置するときに国(原子力規制委員会)に申請する書類(原子炉設置許可申請書)に記載され,国の審査を受けます。
そのため,資格を保有している人が多い方が会社にとってメリットがありますので,会社から必要とされます。
また,原子炉を運転する際だけではなく,原子燃料を輸送する際に,法律上,専門的な知識を有する人の立ち合いが求められるため,会社から必要とされます。
原子力に関して,系統立てて学ぶことができる。
どの資格で言えることは,その業務に携わる人に必要な知識を問う試験でありますので,それらを覚えるのが,当該業務をマスターする近道になると考えます。
合格することも大事ですが,この資格の勉強により,原子力を系統立てて,効率的に学ぶことができると思います。
お祝い金がもらえる。(会社毎に異なる)
所属している会社により異なりますが,合格すれば一定のお祝い金が出る会社があります。
また,一部の会社は手当が出ると聞きましたが,稀な会社だと思います。
デメリット
- 合格率が低い
- 受験料が高い
- 汎用性が低い(活躍の場が限られている)
合格率が低い
- 放射線取扱主任者(第1種):
合格率3割〜4割。マークシート形式であり,少し頑張れば合格できる資格ではないでしょうか。 - 原子炉主任技術者:
筆記試験(一次)の合格率3〜10%。記述式で非常に難しい資格です。
2021年の合格率は2.4%と4名しか合格せず驚きでした。
科目合格がないため,電気主任技術者等のように2〜3年間かけて取得するということができません。合格基準が決まっていますので,一定の人数しか合格させないという方針ではないと思いますが,昔から比べると明らかに難易度が高くなっていると思います。
口答試験(二次)の合格率2割〜3割。 - 核燃料主任技術者:
合格率は15〜30% - 技術士(原子力・放射線部門):
一次試験の合格率6割弱。マークシートであり,比較的難易度は低いです。
二次試験の合格率2割〜3割。 - 作業環境測定士(放射性物質):
合格率6割〜7割。比較的難易度は低いです。
受験料が高い
- 放射線取扱主任者(第1種):19,800円
試験会場が札幌,東京,大阪,福岡のみで,2日間の試験のため,試験会場から遠くの住所の受験生は交通費と宿泊費がかかります。なお,試験合格後に別途1週間の研修が必要で,167,546円かかります。 - 原子炉主任技術者:
一次試験(筆記試験) 52,100円
試験会場が東京のみであり,3日間の試験のため,
地方の受験生は,交通費と宿泊費がかかります。
二次試験(口答試験)は無料。 - 核燃料主任技術者: 47,700円
試験会場が東京のみであり,2日間の試験のため,
地方の受験生は,交通費と宿泊費がかかります。 - 技術士(原子力・放射線部門):
一次試験 11,000円
二次試験 14,000円
試験会場は,北海道,宮城,東京,神奈川,新潟,石川,愛知,大阪,広島,香川,福岡,沖縄。 - 第1種 作業環境測定士: 13,900円
汎用性が低い(活躍の場が限られている)
原子力関係の事業者に必要な技術者であり,その業界では貴重な人材と言えますが,それ以外には使えない資格であり,電気主任技術者,電気工事士等のように,独立して食べていくための資格ではありません。